痛みの神経生理学(Ⅱ) 目次

【伝導・伝達】 『痛い!!』と感じた時に身体の中で何が起きているのかを『見える化』することがテーマ

伝導伝達

伝導と伝達の違い

伝導とは

・痛覚神経線維(Aδ・C)
・伝導のメカニズム
・跳躍伝導 

病理的な神経障害性疼痛

・異所性発火
・エファプス
・アロディニア

伝達とは

・伝達のメカニズム
・興奮性神経伝達物質と受容体

中枢性感作とは

・テンポラルサメーション(時間的加算)
・ワインドアップ現象

痛みは記憶される

・長期増強(LTP)

リリカの作用機序

みを認知するまでの流れ

痛みのプロセス

前回は「痛みを認知するまでの流れ」の①静止状態 ②興奮をお伝えしました。今回第2回目は③伝導 ④伝達について説明していきます。

導と伝達の違いについて

伝導伝達

侵害受容器に刺激が加えられた時にNa+が細胞内に流入することによって、-70mvだった静止状態の『膜電位』が上昇して、細胞内の膜電位が閾値を超えることで『活動電位』が発生し、興奮が起こります。第1回目はこの「静止状態から興奮」が起こるメカニズムの説明をしました。

侵害受容体
「痛みのしくみとその歪み」日本臓器製薬 引用

そして今回は侵害受容器で発生した活動電位が神経線維を次々に伝わっていくメカニズムについて説明していきます。

伝導」とは先ほどもお伝えしたように侵害受容器で発生した『活動電位』が次々と神経線維の末端まで伝わっていく現象を言います。

伝導

伝達」とは活動電位が神経線維の終末まで伝導してきた時に、次につなげる神経細胞(ニューロン)へ『神経伝達物質』を放出して、次の神経細胞に刺激を伝えることで、新たな活動電位が発生し中枢へと刺激を伝えていきます。

伝達
「痛みのしくみとその歪み(日本臓器製薬)」

伝導伝達

導とは

痛覚神経線維(Aδ・C)

「3:33秒」

痛覚神経線維
「痛みを伝える神経は2種類(Aδ・C)がある」

神経線維には脳から末梢性に刺激を伝える(遠心性)線維と末梢から脳に刺激を伝える(求心性)線維があります。

そして【痛み】を伝える求心性繊維にはAδ(デルタ)線維C線維2種類の痛覚神経線維があります。

神経線維は「太さ」と「伝導速度」によって分類されています。

分類
「痛みの考え方 丸山一男著」

神経線維の太さ
「神経線維が太いほうが速い」

神経線維は線維が太いほうが伝導速度が速くなります。また軸索(神経線維)の周りに『髄鞘(エミリン鞘)』と呼ばれる絶縁性のリン脂質が覆っている線維を有髄神経といい、無髄神経より有髄神経のほうが活動電位が髄鞘と髄鞘の間にある『ランビエ絞輪』に沿って伝導されるので速度が速くなります。

Aδ・C
「髄鞘がある有髄神経のほうが速い」

Aδ繊維とC線維の違い

痛みの種類

痛み
『痛っ!!!!』

例えば包丁で手を切ってしまった時を思い出してみてください。切ってしまった瞬間は『痛っ!!』という鋭い痛みを感じます。これはAδ繊維によって伝わった『速い痛み』です。

その後しばらくしてから「ジンジン」「ズキズキ」と不快な痛みを感じることになります。これはC繊維によって伝わる『遅い痛み』です。

先ほどもお伝えしたようにC繊維はAδ繊維と比べると軸索が細く、無髄神経なのでAδ線維より遅れて痛みを感じます。

速い痛み遅い痛み

画像の説明
「神経線維によって脳に伝わる伝導路も異なる」

伝導のメカニズム

軸索小丘

■活動電位の流れ(局所電流)

伝導プロセス

①軸索小丘(axon hillock)にて発生した活動電位が軸索にある電位依存性Na+チャネルを開口させることで、Na+が軸索内に流入し、脱分極を起こし細胞膜の内側はプラスの膜電位になります。

すると軸索内ではプラスからマイナスへ電気の流れが出来ます。これを『局所電流』と言います。

伝導

②すると隣の電位依存性Na+チャネルの近辺の膜電位が徐々に上昇し、閾値に達することでチャネルが開口します。そしてNa+が流入することで、細胞内はプラスになります。

①の状態では、開いていた電位依存性Na+チャネルは閉口し電位依存性K+チャネルNa-kポンプK+リークチャネルの働きで「再分極」「過分極」に移行し「不応期」になっています。(どの教科書も軸索には電位依存性Na+イオンしか記入されていませんが、実際はその他のイオンチャネルも存在しており、それらの働きにより興奮しても再び静止状態に戻れる仕組みがあります)

軸索
「常に-70mvの静止状態に戻る仕組みがある」

軸索内に生じた局所電流はプラスからマイナスに流れますが、活動電位が伝えられてきた方向のチャネルは不応期になっているので、局所電流は進行方向にしか流れません

不応期

<膜電位図>
静止膜電位(-70mv)からさらに-90mv(仮定)まで膜電位が下がってから徐々に静止状態に戻る。この時期は【過分極】【不応期】といい、たとえ刺激が加わったとしても反応できません

<イオンの動き>
電位依存性K+チャネルが開口し続けているので、K+が細胞外に出続けるために、さらに陰イオンが細胞膜近辺に移動してきて、-90mvまで電位が下がります。
その後、電位依存性K+チャネルが閉じて、「K+リークチャネル」と「Na-Kポンプの働き」により、静止状態に戻ります。

③この活動電位の流れが弱まることなく軸索の終末まで続くことになります。

流れ

跳躍伝導について 

画像の説明

有髄神経繊維(Aδ繊維)の軸索には電気を通さない髄鞘(ミエリン鞘)が囲んでおり、さらに軸索が露出している『ランビエ絞輪』と呼ばれる部分があります。この絞輪部には活動電位が発生する電位依存性Na+チャネルが分布しています。

1つの電位依存性Na+チャネルが脱分極して興奮すると、電流は軸索を通って次の絞輪に流れ、そこで脱分極を起こします。この繰り返しによって興奮が伝導していく結果、活動電位が絞輪から絞輪へと跳躍して伝導しているように見えることから『跳躍伝導』と呼ばれます。

よって有髄であるAδ繊維は無髄神経線維であるC線維よりも早く電気信号を伝達することが出来るのです。

病理的な神経障害性疼痛

神経痛

有髄神経線維が損傷(外傷炎症腫瘍代謝異常)を受けると、髄鞘(ミエリン鞘)が『脱髄』を起こします。脱髄を起こした初期の軸索にはNa+チャネルは少ないので、正常に伝導できなくなります。さらに時間が経つとむき出しになった軸索に新しいNa+チャネルが発現して、異常興奮が起こるようになります。これを「異所性発火」と言います。

神経障害性疼痛

異所性発火
「よくわかる痛み鎮痛の基本と仕組み 伊藤和憲著」

また、電気を絶縁している髄鞘が脱髄すると、隣接する神経線維に漏電してしまい、興奮していない神経線維を刺激してしまいます。これを「エファプス」と言います。

例えば、Aβ繊維(触覚神経)が脱髄を起こすと、隣接する痛覚神経であるAδ・c繊維を刺激してしまい、触るだけで痛いという通常の生理学的な痛みではない「アロディニア」が起きます。

アロディニア
「よくわかる痛み鎮痛の基本と仕組み 伊藤和憲著」

このような神経線維自体が損傷を受けて生じる痛みは通常の生理学的な痛みではなく、病理的な普通ではない痛みとなりますので我々のような施術院では頻繁にみることはないかと思います。

神経障害性疼痛評価
「神経障害性疼痛評価」日本ペインクリニック学会

達とは

Aδ繊維による伝達
「Aδ繊維による伝達」

機械的刺激や熱刺激を受けて生じた活動電位をAδ(デルタ)繊維が伝える「速い痛み」の興奮(活動電位)は脊髄後角の神経終末に到着すると、電位依存性Ca2+チャネルが開口して、細胞内にCa2+が流入し、『シナプス小胞』と結合することでシナプス間隙へグルタミン酸という興奮性の神経伝達物質を2次ニューロンへ放出されます。

次に2次ニューロンのグルタミン酸受容体(AMPA受容体)に結合すると、神経伝達物質依存性のイオンチャネルが開口してNa+が流入して、脱分極が起き膜電位が上昇し始めます。

膜電位が閾値を超えると、電位依存性Na+チャネルが開口し、活動電位が生じ、2次ニューロンが興奮して、活動電位が軸索を伝わって脳に伝導されます。

C繊維による伝達
「C繊維による伝達」

一方、「遅い痛み」であるC線維終末からはグルタミン酸だけでなく、サブスタンスPが放出されます。放出された神経伝達物質はグルタミン酸受容体、NK-1受容体(サブスタンスP)に結合して脱分極を起こし、閾値に到達すると活動電位が生じます。そして二次ニューロンが興奮することで痛みのインパルス(活動電位)が軸索を伝わって脳に伝導されます。

神経伝達物質と受容体について

神経伝達物質

痛覚神経線維であるAδ繊維とC繊維ではそれぞれ神経線維末梢で分泌される神経伝達物質が異なり、それに対応する2次ニューロン前膜の受容体も異なります。

Aδ繊維

Aδ繊維から分泌されるのは『グルタミン酸』です。グルタミン酸と結合する受容体は『AMPA受容体』と『NMDA受容体』です。この2つの受容体のタイプは【イオンチャネル型受容体】なので、グルタミン酸が受容体に結合することでイオンチャネルが開口し、Na+が細胞内に流入します。

しかしNMDA受容体に関しては通常はMg2+(マグネシウムイオン)によって開口できません。

C繊維

C繊維から分泌されるのは2種類あり、一つは『グルタミン酸』もう一つは『サブスタンスP』です。

サブスタンスPが結合する受容体は『NK-1受容体』であり、受容体タイプはイオンチャネル型ではなく、【Gたんぱく質共役型受容体】になります。

Gたんぱく質共役型受容体は受容体がイオンチャネルになっているのではなく、サブスタンスPが受容体に結合することで生化学反応が起き、『Na+・Ca2+が細胞内に流入しやすい状態』『イオンチャネルの感受性が高まる(陽イオンが流入しやすくなる)状態』にします。これを【リン酸化】といいます。

リン酸化が起きることでNMDA受容体のMg2+が外れ、Na+、Ca2⁺が細胞内に流入することにより興奮しやすくなります

リン酸化
「リン酸化が起こることでNMDA受容体のMg2+(マグネシウムイオン)が外れる」

枢性感作とは

感作

感作とはなにかと言いますと、「興奮しやすい状態で、膜電位が上昇し活動電位が発生しやすくなっている状態」です。第1回目で説明した「末梢性感作」は1次ニューロンの自由神経終末で起き、中枢性感作脊髄後角シナプス伝達が強くなった状態と言えます。 中枢性感作が起きるメカニズムにはいくつかあります。

テンポラルサメーション(時間的加算)

テンポラルサメーション
「痛みのしくみとその歪み(日本臓器製薬)」

高温の熱刺激を感じ取る受容体は2つあり、52℃以上の熱刺激を受けると興奮する受容体はAδ繊維で、これは1次痛(first pain)と呼ばれる「速い痛み」ですが、それ以外に43℃以上で興奮するのがC線維で2次痛(second pain)「遅い痛み」と呼ばれている痛みです。

このC線維のみを興奮させるために47~51℃の熱刺激を3秒に1回継続刺激させると、もともと単発の痛みであれば、10のうち2か3くらいの痛み刺激だったのが、刺激回数が増えるごとに、同じ強さの刺激でも痛みが増してくる現象が起こります。これをテンポラルサメーション(時間的加算)と言います。

慢性痛

この刺激を6秒に1回にするとテンポラルサメーションは起きにくくなります。また、Aδ繊維である1次痛ではテンポラルサメーションは起きにくいと言われています。

ワインドアップ現象

ワインドアップ現象
「痛みのしくみとその歪み(日本臓器製薬)」

C線維の1次ニューロンからの繰り返しの活動電位がシナプス前膜にある電位依存性Ca2+チャネルを開口させ、細胞内にCa2+を大量に流入せることにより、興奮性神経伝達物質である「グルタミン酸」「サブスタンスP」をシナプス間に放出します。1次ニューロン終末からの神経伝達物質の放出亢進により、2次ニューロンが興奮しやすい状態になります。これを『ワインドアップ現象』と言います。

ワインドアップ現象のメカニズム

メカニズム
「C繊維への繰り返しの刺激により脊髄後角においてワインドアップ現象が起こる」

このワインドアップ現象のメカニズムはグルタミン酸受容体(AMPA受容体)によるNa+の細胞内への流入だけでなく、NK-1受容体(Gたんぱく共役型受容体)にサブスタンスPが結合することにより、リン酸化が起き、NMDA受容体に蓋をしていたMg2+(マグネシウムイオン)が外れて、細胞内にCa2+が流入します。

また、AMPA受容体もリン酸化することで、感受性が高まり、よりNa+が細胞内に入りやすくなります。さらに細胞膜上にAMPA受容体が増加します。

以上のことから膜電位が上昇し興奮しやすい状態になっています。つまり痛みを感じやすくなります。

みは記憶される

痛みの記憶

臨床では身体に損傷が見当たらない、神経の痛みでもない、筋肉の緊張も強くない。にも関わらず、何カ月も強い痛みを訴える患者さんもおられます。そういった患者さんの中には『身体が痛みを覚えてしまっている』と仰る方もおられます。

「身体が痛みを覚える」ということはあるのでしょうか?

記憶

記憶はどこで行われるでしょうか?例えば、英単語を覚えるときは脳の側頭葉海馬で記憶されます。運動や演奏など身体を動かすことで運動パターンを覚えるときは小脳で記憶されます。

そして、強烈な痛みや繰り返される痛みの刺激は『脊髄後角』で記憶されるのです。

継続的な刺激により2次ニューロンが興奮しやすい状態(ワインドアップ現象)となり、脊髄後角において「痛みを記憶」しているとも言い換えられます。

記憶とは「シナプス伝達の強化が長期間持続する状態」であり、二次ニューロンが興奮しやすくなっている状態のことを『長期増強』(LTP)とも呼ばれます。

長期増強(LTP)とは

長期増強
「痛みの考え方 丸山一男著」

野球のバッターBOXでは打席に入る前に必ず数回素振りを行うと思います。それは刺激を与えシナプス伝達を繰り返すことで、シナプス伝達の効率が高まり、伝達しやすい状態がしばらく続くので、本番で実際打席に入った際に望んだシナプス伝達が再現されやすくなるからです。

野球

さらに直前だけでなく、日頃から素振りを繰り返していればシナプス伝達は一定期間維持できます。さらに刺激が加わることで「長期増強」(LTP)が起きます。

シナプスは刺激が継続されると伝達しやすくなる性質があり、伝達のしやすさは変化しやすく、刺激が消失してもしばらくもとにもどらない性質があります。これを「シナプスの可塑性」と言います。

学習記憶も一瞬の記憶であれば、すぐに忘れてしまいます。テスト勉強の一夜漬けなどがそうです。

一夜漬け
「繰り返しの刺激により記憶される」

すこし時間が経っても覚えていることもありますが、やがて忘れます。そして繰り返し繰り返しインプットを続けていると、時間が経過しても入力なしに覚えている状態になります。これを長期増強(LTP)といいます。

同様に痛み刺激も繰り返しの入力により『脊髄後角』において長期増強が起きることがわかってきました。

痛みが身体に記憶されるメカニズム

慢性化のメカニズム

【痛みの記憶化】を神経生理学的にいうと「NMDA受容体が長期的に開口した状態」と説明できます。

中枢性感作

痛みの刺激が継続的に続くと、痛覚神経であるC線維からサブスタンスPがNK-1受容体(Gたんぱく質共役型イオンチャネル)に結合し、リン酸化が起こることでNMDA受容体Mg2+が外れることにより、グルタミン酸が結合しNa+、Ca2+が流入しやすくなります。

またAMPA受容体もリン酸化を受け、たんぱく質構造が変化することで感受性が高まり、Na+が流入しやすくなります。さらにはAMPA受容体自体の数も増加し、膜電位を上昇させます。

これらにより2次ニューロンのシナプス後膜は活動電位が発生しやすい状態になっているので、ちょっとした刺激でさえ興奮しやすいくなります(中枢性感作)

つまり、痛みを記憶するとは2次ニューロンで感作が起きているという事なのです。

感作
「痛みの考え方 丸山一男著」

痛みの記憶を忘れるためには

画像の説明

記憶を忘れるにはどうしたらいいでしょうか?

通常は繰り返さなければ自然に思い出せなくなり時間と共に忘れます。脊髄後角での痛みも記憶と捉えられるので、刺激されなければ、時間と共に忘れることが出来るでしょう。忘れるとはこの場合、興奮しやすくなっている状態が収まるということです。

そこで痛みを記憶しないようにするには、痛みがあったら長引かせずに早期に鎮痛することが大切です。

自分で出来ることとしては、「痛みの正しい知識を知る」「痛みの確認をしない」「意識が痛みに行かないように趣味を楽しむ」「気持ち良い・心地よい運動を行う」などがあります。

鎮痛のメカニズムに関しては次回第3回目に詳しく説明します。

薬物療法

NMDA受容体の長期開口に対しての薬物療法としては、ケタミン、メジコンがNMDA受容体の拮抗薬としてNMDA受容体を閉じる働きがありますが、NMDA受容体拮抗薬は脊髄後角の受容体だけでなく、記憶を司る海馬のNMDA受容体もブロックしてしまうので副作用としては記憶力が低下し物忘れが増える可能性があります。

またNMDA受容体はMg2+(マグネシウムイオン)、Zn2+(亜鉛)、抗うつ剤などと結合する部位があるためNMDA受容体のCa2+流入を抑制する働きがあります。逆にグリシン、NMDA(グルタミン酸)は興奮性なので開口させる働きをします。

リカの作用機序

画像の説明

自由神経終末の侵害受容器から発生した活動電位は軸索を伝導し1次ニューロンの終末まで来ると閾膜電位(閾値)を感じた『電位依存性Ca2+チャネル』が開口することで細胞内にCa2+が流入します。細胞内にCa2+が入ることで、シナプス小胞と結合し、中に入っている興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸、サブスタンスPがシナプス間隙に放出されます。

ということは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸、サブスタンスPの放出が低下すれば、2次ニューロンに伝達されませんので、痛みの抑制につながります。

痛みを抑制させるにはCa2+を細胞内に流入させなければいいわけですが、方法は2つあります。

1つ目は電位依存性Ca2+チャネルが開口しないように、膜電位をさげること。具体的にはK+を細胞外に出すこと、 Cl-を細胞内に入れることです(このメカニズムは第3回痛み学「鎮痛」で説明します)

そしてもう1つの方法が電位依存性Ca2+チャネル自体を閉じることです。

リリカ

Ca2+チャネルにはいくつかの種類があり、神経線維に存在するCa2+チャネルはN型です。

リリカの作用機序
「痛みの考え方 丸山一男著」

Ca2+チャネルはα1(アルファ1)、α2δ(デルタ)、γ(ガンマ)、β(ベータ)のサブユニットで構成されていて、α1サブユニットが開口することで細胞内にCa2+が流入されます。

そこでα1の穴を閉じればいいわけですが、高血圧の際に処方されるCa2+拮抗薬はL型Ca+チャネル(血管平滑筋)に作用し、直接α1サブユニットに蓋をするように結合するので、Ca2+が細胞内に流入できなくなります。血管平滑筋の細胞内にCa2+が流入されないので、筋肉の収縮が起きず血圧は下がります。

しかし「リリカ」の場合は、直接α1サブユニットに蓋をするわけではありません。

画像の説明

もうひとつのサブユニットである『α2δサブユニット』の働きはα1サブユニットを広げてCa2+の流入量を増やすことです。よってα2δサブユニットが過剰に働くことにより、細胞内にCa2+が増え、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸やサブスタンスPの過剰放出が起き、普通ではない異常な痛みとなります。

そこでこの病態の際に、リリカを服用することで、α2δサブユニットに作用して、α1サブユニットを開きづらくさせます。よってCa2+の細胞内の流入が減少することで興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸、サブスタンスPの放出も減少し痛みが抑制されます。

このように、リリカの効果が認められるのはα2δサブユニットが過剰に働きすぎている場合つまり病理的な痛み(神経障害性疼痛)の場合なのです。

しかし、臨床で多く経験する通常の生理的な痛みの場合、α2δサブユニットは通常働いていません。

リリカ必要?

坐骨神経痛や脊柱管狭窄症と診断されシビレが出ている患者さんでリリカを服用している患者さんがとても多いですが、病理的な痛みの状態(α2δサブユニットが過剰に興奮)の方は少ないと思われます。生理的な痛みの場合、α2δサブユニットは興奮していないのに、α2δサブユニットに作用するリリカを服用しているのです。この服用は痛みのメカニズムには合っていないので効果は望めないでしょう。

以上、ここまでが2回目痛み学講座Ⅱとなります。お疲れ様でした。

次回予定

内容


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