41年ぶりの「痛みの定義」改訂について

こんにちは!!痛みのミカタ講師のタマダです。今日は国際疼痛学会(IASP)による痛みの定義改訂についてお話します。

黄色で塗ってある所が新しく定義された文章になります。

インフォグラフィック

今回の定義改訂は41年ぶりとなりますが、そもそも「痛みの定義」とは何かというお話からしていきます。

1979年版 痛みの定義

1979年痛みの定義

詳しく定義を見ていきますと、「実際の組織損傷」以外にも、「潜在的な組織損傷」とありますが、潜在的な組織損傷とは例えば、『注射をする際に実際に針が刺さる前に皮膚に触れただけで痛いと感じる場合』などがあります。また侵害刺激の入力がなくとも脳内で痛みを感じる場合などもあります。

痛み
「痛そうな写真を見るだけで痛みや不快感を感じる」

※「痛覚」と「知覚」の違いについてーブログ

またこのような組織損傷の際の「言葉として表現される」不快な感覚的かつ感情的な体験と定義されています。

ここでのポイントは「言葉として表現される」という部分で、この解釈ですと、言葉を発する事が出来ない方、例えば乳幼児、コミュニケーションが取れない方、動物は痛みの定義から外れてしまいます

乳幼児

それらを踏まえて新しい痛みの定義が改訂されました。

2020年版 痛みの定義

2020年版
「日本語訳はGoogle翻訳による」

1979年版と比べてみますと大きな変更はないように見えますが、2020年版にはdescribed(言葉として表現される)が削除され、resembling(類似した)という単語に変わり、より抽象度が広がった痛みの捉え方となりました。

Six Kye Notes(6つの注釈)

新しい定義の他に定義を補足する「6つの注釈」がありますのでそちらを説明します。

注釈

a1 (1)

痛みは常に「個人的な経験」であるということ。人と比べることが出来ない、客観的に数値を評価できない「主観的」なものである。また、生物学的(biological)、心理学的(psychological)、社会的要因(social)いわゆるBPSモデルによって痛みを理解すること。

a2 (4)

侵害受容=痛みとは限りません。同じ侵害刺激でもcontext(環境や状況)によって痛みを強く感じたり、逆に痛みを感じにくくなったりします。よって侵害受容器が興奮したからと言って痛みを感じるとは限りません。※第3の痛みの分類についてーブログから

画像の説明

人それぞれ、生まれてから様々な刺激を受けて痛みを感じ、痛みを学習していきます。多くの場合は怪我などを経験することで、痛い所が痛みの原因と学習されることでしょう。また整形外科では「生物医学モデル」で痛みを捉えてきました。経験したことがない痛み、学習してこなかった痛みは理解することが難しいでしょう。よって痛みの定義を理解し、新しい痛みの捉え方を学ぶ必要があるのです。

画像の説明

そして新しい痛みの定義を広めることが大切ですが、人それぞれが経験、学習してきた痛みは個人的であり主観的なものであるので、まずは訴えている痛みは尊重すべきであり、施術者側の押し付けにならないようにすること。

画像の説明

確かに痛みは危険を知らせる1つの警告信号ではありますが、急性期を過ぎた慢性痛においては生命の危険を知らせる意味合いはありません。

画像の説明

言葉に表すことが出来ないからといって痛みが無いとは限らない。言葉を発する以外で痛みを表現する行動により痛みを経験しているかもしれない。

まとめ

インフォグラフィック

画像の説明

「痛みのニュアンスと複雑さをよりよく伝えるために、そしてそれが痛みのある人の評価と管理の改善につながることを望みました」Srinivasa N. Raja, MD

今回の定義改正によって言葉によって痛みを表現できない、乳幼児や高齢者、言葉を発することができない方、あるいは動物においても痛みを表現しうる存在であるという痛みの概念の抽象度が広がった定義改正となりました。インフォグラフィックのイラストにも描かれている家族もまた第三者にはわからない何かしらの痛みを抱えているかもしれませんし、犬もまた言葉以外の痛み行動で感覚的、感情的な痛みを表現しているかもしれませんね。

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